#6 VANCOUVERの海


 
2004年8月、フリーダイビング世界選手権に参加した時のこと。
競技本番よりも、練習2日目のダイブ(-50m)が一番印象に残っている。

CONSTANT競技の場所は、海というよりは湖のような
(内海で山に囲まれており、水も真水が豊富に混ざっていて塩辛くない)LIONS BAY沖。
水温はサーフェスで19℃。エントリーして5分もしないうちに震えがきた。
海の水は、水面から水深数メートルまで藻類(非常に微細な)が覆っているらしく、
そこで日光が遮断されるため、昼なのにとっても暗かった。

私は、他の選手達のようには前入りできなかったため、
競技本番まで2日(各1時間程度)しか練習時間がなく、
正直、「暗くて怖い」とか躊躇してる場合じゃなかった。
セーフティーのカナダ人達は皆親身だったし、
ここは鮫や大きい魚がいないということも海の感じからして明らか。
とにかく潜りたかった。

でも、あんな暗い海で潜ったのは初めて!今後もまずないと思う...。
水深20mからナイトダイブの世界に突入、
40mあたりからは、自分の肩さえも見えない、真の暗闇だった。
目の前のガイドロープも見えるはずがなく、
ただマイナス浮力で落ちていくだけ...。
 
左腕に繋げたラニヤードケーブルに「ガン!!」と引っ張られ、
自分が-50mに届いたことが分かった
(後から聞いたら、サーフェス地点にもロープの衝撃が伝わり、
私が下まで届いたのが分かったらしい)。
まさに命綱、と思いながら転回し、盲目のまま今度は水面を目指した。

他の選手からは変人扱いされたが、
あの暗闇には不思議な浸透力があり、
潜っている時に嫌ではなかったのが自分でも不思議。
「あっち側の世界」に行って帰ってきたような、
神秘的、霊的な体験に近いのかも...と思ったり。
真剣に潜ったので、集中して不思議な精神状態になり、
そんな風に感じたのかも。

(2004.10月)